セレクトセールって何?その歴史や圧倒的人気を誇った馬についても紹介!
セレクトセールって何?
セレクトセールとは、日本競走馬協会が主催する日本最大のセリ市のことです。
セレクトセールは1998年に始まり、毎年7月の前半に北海道苫小牧市にあるノーザンホースパーク内の会場で行われます。そこでは当歳(0歳)馬の部、1歳馬の部のセリが行われます。
世界中を見ても、まだまだ将来どうなるか分からない当歳馬のセリ市が行われていることはほとんどなく、ここ数年は当歳馬のセレクトセールの最高落札額が、その年の世界最高落札額になることが多くなっています。
またJRHAは、社台グループが中心となって作られた協会のため、会場がノーザンホースパークとなっています。
また、セレクトセールに上場される馬も社台グループの牧場で生産された馬が数多く上場されているのが特徴です。
このため「社台のセリ市」とも言われています。
今回はそんなセレクトセールについてご紹介していきたいと思います。
セレクトセールの歴史
1998年創立と他の市場に比べると歴史は浅いものの、社台グループの生産馬を中心に、良血、好馬体の馬たちが惜しげもなく上場され、当歳市場からはディープインパクトやキングカメハメハ、ディープブリランテ、ロジャーバローズという4頭の日本ダービー馬に加え、2023年度にはウシュバテソーロがドバイワールドカップを制する快挙を成し遂げました。
また、1歳市場からはジャスタウェイやサトノクラウン、アドマイヤマーズ、グローリーヴェイズ、アドマイヤラクティ、ナカヤマフェスタ、トーセンスターダム、Yoshidaと世界の舞台でも活躍した馬たちを輩出、そして2020年度にはデアリングタクトが牝馬三冠を無敗で制覇、2021年度にはラヴズオンリーユーが海外G1を3勝(クイーンエリザベスⅡ世カップ、ブリーダーズカップ フィリー&メアターフ、香港カップ)し米国・エクリプス賞最優秀芝牝馬に選出、2022年度はタイトルホルダーが天皇賞(春)と宝塚記念を制するなど、世界のホースマンから注目されるビッグマーケットに成長しています。
第1回セレクトセールの前には、米国ブラッドホース誌、英国ペースメーカー誌に広告を掲載したほか、英語のせり名簿を作成するなど、早くから世界を意識していたことも話題となりました。
また、現在では当たり前となった劇場ステージ型のせり台や、販売希望価格よりも低く設定されたスタート価格、あるいは会場内外を彩る花や食事などの購買者サービスや、競馬とは直接的には関係がないような高級車、ファッションブランドなどの出店が会場内を彩っています。これらは、セレクトセールがきっかけとなって他の市場に導入されるようになっています。
開設当初は、当時の日本のマーケットが求める当歳市場をリードするような形で歴史が重ねられ、第2回セレクトセールからは1歳市場を休止。
2005年までは当歳馬のみ300頭規模(2日間)で市場を拡大していきました。
その後、購買者側の趣向に変化が生じて2006年からは1歳市場を復活。
この年、初めて総売上げが100億円を突破。2009年までは当歳2日、1歳1日という計3日間スケジュールで行われていましたが、2010年からはそれぞれ1日のみの合計2日間開催に落ち着いています。
20周年目となった2017年度は、1歳市場・当歳市場ともに売却総額・平均価格・中間価格・売却率の市場レコードを達成、2018年度は、1歳市場で市場レコードを更に塗り替える驚異的な結果を残しました。
2019年度は1歳市場・当歳市場ともに売却総額・平均価格・売却率で更に市場レコードを塗り替え、世界に衝撃を与えました。
2020年度はコロナウイルス禍という難しい状況で実施されましたが、1歳市場では売却総額が過去最高だった2019年に次ぐ歴代第2位(104億2,800万円)、売却率も同じく歴代第2位(92.0%)、平均価格は歴代3位(4,554万円)を記録、当歳市場では売却率が過去最高タイの89.8%、平均価格は歴代第3位となる4,105万円を記録しました。
コロナウイルスの影響が続く2021年度は、1歳市場では、売却総額は過去最高だった2019年度(107億3,200万円)を大きく上回る116億3,300万円(税別)、売却率も2019年度(92.9%)の記録を塗り替える93.4%、平均価格も2019年度(4,834万円)の記録を上回る5,147万円(税別)、中間価格も歴代最高の3,500万円(税別)、当歳市場では、売却総額は過去最高だった2019年度(97億8,400万円)を大きく上回る109億2,300万円(税別)、売却率も2019年度&2020年度(89.8%)の記録を塗り替える92.6%、平均価格も2019年度(5,043万円)の記録を上回る5,128万円(税別)、中間価格も歴代最高の3,300万円(税別)というレコードずくめの結果となりました。
25周年目となった2022年度は、1歳市場では、売却総額は過去最高だった2021年(116億3,300万円)を大きく上回る128億7,000万円(税別)、売却率も過去最高だった2021年(93.4%)の記録を塗り替える95.3%、平均価格も過去最高だった2021年(5,147万円)の記録を上回る5,797万円(税別)、中間価格も歴代最高の4,200万円(税別)、当歳市場も、売却総額は過去最高だった2021年度(109億2,300万円)を大きく上回る128億9,250万円(税別)、売却率も2021年度(92.6%)の記録を塗り替える95.3%、平均価格も2021年度(5,128万円)の記録を上回る5,730万円(税別)、中間価格も歴代最高の4,000万円(税別)と、驚異的な数字を叩き出しました。
圧倒的人気のサンデーサイレンス
初年度に行われたセレクトセールでは、1歳馬47頭、当歳馬183頭(合計230頭)が上場していました。
上場産駒の父は全部で67頭となります。
その中にはセクレトやシンボリルドルフ、リアルシャダイ、ラムラタ、ノーザンテースト、トニービン、フォーティナイナー、ブライアンズタイムといった、競走馬生産で今もなお話題となる偉大な種牡馬たちが名を連ねています。
更には現役時代に人気を集めたトウカイテイオーやナリタブライアン、メジロマックイーン、メジロライアン、サッカーボーイなどの名前も見られ、既にメンバーの豪華さと多彩さが感じられるといったところでしょうか。
もう一つ感慨深い点を挙げるとすれば、既にフジキセキやダンスインザダーク、サクラバクシンオーも、父としてこのセールに参加していたことでしょう。
種牡馬として、多くの大先輩たちと戦ってきたのだなと思います。
そして、やはり人気の中心となるのはサンデーサイレンスでした。
初期におけるセレクトセールで、背骨ともいえる存在です。
23頭を出して、主取3頭と欠場1頭を除けば3100万~1億9000万と非常に価格の水準が高く、平均額は約9157万円でした。
全体の平均価格が3400万円ですので、圧倒的ともいえる価格です。
落札額上位TOP10を見ても、その内9頭がサンデーサイレンス産駒という1人勝ち状態です。
この年のセレクトセール上場馬で、のちにGIを勝利する馬は2頭いましたが、やはりどちらの父もサンデーサイレンスでした。
ちなみにその2頭はマンハッタンカフェ(菊花賞・有馬記念・天皇賞春)と、ビリーヴ(スプリンターズステークス・高松宮記念)です。
長距離GIを3勝する産駒と短距離GIを2勝する産駒を同じ年にセールに出すという、サンデーサイレンス産駒の条件不問さがうかがえる結果に思えます。
ちなみにエリザベス女王杯2着のダイヤモンドビュー(父はサンデーサイレンス)も同年度のセレクトセール出身となります。
落札額TOP5は以下の通りです。
- 父サンデーサイレンス・母ファデッタ→19,000万円 当歳(牡)
- 父サンデーサイレンス・母トリプルワウ→18,000万円 当歳(牡)
- 父サンデーサイレンス・母ステラマドリッド→17,500万円 当歳(牝)
- 父ブライアンズタイム・母サクラハゴロモ→14,500万円 当歳(牡)
- 父サンデーサイレンス・母バレークイーン→14,000万円 当歳(牡)
短距離チャンピオン・サクラバクシンオー半弟の当歳馬であるサクラハゴロモが、唯一父サンデーサイレンス以外の血統でランクイン。
流石の良血といえるでしょう。
父もナリタブライアン等を輩出している人気種牡馬ブライアンズタイムでした。
逆に言えば、これほどレベルの高い良血でなければ、サンデーサイレンス産駒の並ぶ高額ランキングには食い込めなかった、とも考えることができます。
しかしながらデビューしてからは中央で1勝のみにとどまる最高額の馬は、母が米GI馬の半妹という事で人気を集めていたようです。
また、2番手の母であるトリプルワウも米G3の勝ち馬と、アメリカでの実績を持つ馬でした。
トリプルワウの仔はその後フサイチオーレと名付けられ、日本でオープン勝ちを収めた後に、日本馬として初めてのオーストラリア遠征に参加。
更にはそのままオーストラリアへ移籍して種牡馬となったという、ちょっと面白い経歴を持った馬です。
サンデーサイレンス亡き後の多彩な種牡馬市場
そこから9年の時を経て、2007年度には1歳馬150頭、当歳馬317頭(合計467頭)が上場。
82頭の種牡馬が産駒をセールへ送り出しています。
翌年にはディープインパクト産駒の当歳馬がセールに上場してくる、いわばディープインパクト前夜ともいえるこのセール。
鳴り物入りのルーキー種牡馬を迎え撃つべく、様々な血統の種牡馬が父として顔をそろえていました。
上場が多かった種牡馬はクロフネ(38頭)、キングカメハメハ(36頭)、アグネスタキオン(30頭)、シンボリルドルフ(27頭)、フジキセキ(26頭)です。
サンデーサイレンスの時代に、並んでトニービンやブライアンズタイムという輸入種牡馬が人気だったという点と比べて、現役時代も日本で実績を残した種牡馬が人気を集めているのが印象的です。
基本的に高額な繁殖牝馬はサンデー系が多く、非サンデー系の種牡馬には大きなアドバンテージとなっていたと考えられます。
輸入牝馬が人気だった頃よりも現役時代日本で活躍していた牝馬たちも目立ちます。
逆に、サンデーサイレンスの入っていない牝馬の多くはサンデー系種牡馬と配合されていました。
落札額TOP5は以下の通りです。
- 父クロフネ・母マイケイティーズ→30,000万円 当歳(牡)
- 父フレンチデピュティ・母マイケイティーズ→25,000万円 一歳(牡)
- 父ダンスインザダーク・母エアグルーヴ→24,500万円 一歳(牡)
- 父ジャングルポケット・母エヴリウィスパー→17,000万円 一歳(牡)
- 父キングカメハメハ・母マストビーラヴド→15,500万円 当歳(牡)
上記した傾向は、落札額上位にも顕著に表れているかと思います。
落札額TOP10まで対象を広げても、サンデーサイレンスが入っていない馬は2頭のみでした。
そのうちの1頭である落札額第4位の馬は、のちに天皇賞秋を勝利するトーセンジョーダンであり、当時から話題となっている馬です。
上位2頭は半兄アドマイヤムーンの活躍によるところが大きいにせよ、非常に分かりやすい構図となっていたかと思います。
一強のディープインパクト
そして、過去最高売り上げを叩き出した2016年の上場馬数は、1歳馬247頭・当歳馬243(合計490頭)となっています。
しかし、父を見てみると、55頭と2007年よりもかなり減少傾向にあるのが興味深いです。
やはり目立つのは35頭のディープインパクト産駒です。
主取となった2頭を除けば、最低落札価格でも4000万円という高額でした。
16頭が1億円超え、しかもそのうち7頭は2億円超えという圧倒的な結果となっています。
平均価格は1億2600万円を超えており、ディープ産駒だけでも41億円以上の売上を記録しているのは脅威としか言えないでしょう。
ちなみに16頭の1億円超えホースたちは全て社台系牧場の生産馬であり、その盤石さがうかがえます。
- 父ディープインパクト・母イルーシヴウェーヴ→28,000万円 当歳(牡)
- 父ディープインパクト・母マルペンサ→28,000万円 当歳(牡)
- 父ディープインパクト・母オーサムフェザー→26,000万円 一歳(牡)
- 父ディープインパクト・母マンデラ→24,000万円 当歳(牡)
- 父ディープインパクト・母シャンパンドーロ→23,500万円 当歳(牡)
最高落札価格となった2頭の産駒の母はどちらも輸入牝馬です。
イルーシヴウェーヴは仏1000ギニーなどを勝利したG1馬で来日後は2年連続ディープを配合されています。
マルペンサは今年のダービー2着馬サトノダイヤモンドの母としてもしられている、アルゼンチン出身のG1馬です。
3番手の落札額となった馬の母、オーサムフェザーも強豪馬。米で11戦10勝という戦績を残しています。
その後もマンデラ(独G1馬)、シャンパンドーロ(米G1馬)、カンビーナ(米G1馬)と、落札価格上位7頭までが輸入牝馬×ディープインパクトという配合。
サンデーサイレンス全盛期と似た、非常にわかりやすい構図となっているのではないでしょうか。
印象的なのは、10年前は海外G3を勝った馬でも繁殖としては最高クラスの扱いだったのに比べ、現在はディープ用に輸入した各国の名牝が当たり前のように集中しているという事でしょう。
これは、日本競馬界の成長によるところが大きいのではないかと思います。
この牝馬たちの産駒はディープインパクトの種牡馬としての成績をあげるというだけでなく、引退後も繁殖牝馬として日本に根付き、日本競馬の全体的な血統レベルの向上へ貢献することでしょう。
まとめ
今回はセレクトセールについてご紹介していきました。
セレクトセールの馬たちからも日本競馬会の隆盛が見えてくると思います。
これからのセレクトセールでディープの後継種牡馬たちが活躍してそのまま一大血統を築き続けるのか、新たなビッグネームが現れるのか、とても楽しみです。
セレクトセールが気になった方はぜひチェックしてみてください。