競馬においての騎手とは?なる方法は?平均的な収入や必要な資質などを解説

競馬においての騎手とは?なる方法は?平均的な収入や必要な資質などを解説

騎手とは

スポーツ選手の中でも憧れの職業の1つになっているのが、騎手です。

JRAの騎手なら年間の報酬が2000万円から6000万円の人が全体の6割、6000万円以上の人が全体の2割という高収入も魅力ですよね。

しかしある条件によって、なりたくてもなれない人も大勢います。

今回はそんな騎手についてご紹介していきたいと思います。

騎手になるまでの道のり

一言で騎手といっても、その活動の場は日本中央競馬会(JRA)と、地方競馬(NAR)の2種類があり、プロになるための免許も異なっています

ではどのようにしたらそれぞれの免許を獲得できるのでしょうか?

JRA競馬学校・入学まで

JRAの機種になるには、JRA競馬学校の騎手課程を卒業して免許試験を受けることになります。

そのためには、まず倍率が10倍以上といわれる入学試験を突破しなければなりません。

受験できるのは、4月1日の入学時点の年齢が15歳以上20歳未満の人。

体重など、いくつか応募資格が定められているため、事前に応募要項をチェックしておく必要があります。

受験は入学の前年7月までに願書を受け付け。8月に1次試験があり、合格すると10月頃に2次試験を受けます。

1次試験は身体検査、体力測定、学科試験、面接等、2次試験は合宿形式で騎乗実技や面接等の試験を行います。

合格者は10月下旬頃にJRAのホームページ上で発表され、毎年約150名が受験し、合格者はわずか7・8名という狭き門ですが、一般的な高校や大学の入試前にチャレンジできるのがポイントです。

JRA競馬学校での課程

千葉県白井市にあるJRA競馬学校では寮生活をしながら騎手になるための指導を3年間受けます

17.5ヶ月間の基礎課程では、乗馬や走路騎乗など実技の他、フィジカルトレーニング、関係法規や馬学の専門カリキュラムなどを学習。

次の1年間は実践課程の前期としてトレーニング・センターの厩舎に配属され、調教師の指導で実践的な騎乗技術を覚えていきます。

そして最後の5.5ヶ月間は実践課程の後期としてレースの訓練。再び競馬学校で生徒同士の模擬レースなどを行い、技術を磨きます。

騎手免許

試験最後は騎手免許試験への挑戦

JRAの騎手免許試験は学力(筆記・口頭面接)、騎乗技術、身体検査、人物考査(面接)という内容で行われます。

騎手免許試験に合格すると競馬学校の課程は終了。

最初は美浦や栗東いずれかの厩舎に配属され、プロ騎手としてのスタートを切ることになります。

短期騎手免許

指定競走・交流競走・特別指定交流競走で騎手免許がない競走に騎乗する場合には、試験なく「その競走に限定した騎手免許」が交付されます。

日本国外の競馬で騎乗している騎手に対しては、日本国内の調教師・馬主を引受人として臨時に行われる試験に合格した上で、1ヶ月単位の短期免許を1年の間に3ヶ月間まで交付されます。

ダブル免許制と安藤勝己

2003年2月までJRA・NARの免許を両方持つ騎手は存在しなかったが、2003年2月に当時笠松競馬場所属であった安藤勝己がJRAの免許試験に合格し、同時にNARの騎手免許の取消願を提出しました。

この時、NARはダブル免許を容認し、中央競馬の免許の取得による免許の取消には応じなかったため、2003年3月1日から安藤はJRAとNARの両方の免許を所有することになりました。

この時点でJRAは、地方競馬の免許で騎乗した場合には中央競馬の免許を取り消すとしていました。

一方で安藤がNARの交流競走に騎乗した時には、地方競馬全国協会は「すでに(地方競馬で有効な)免許がある」として短期免許を交付しなかったため、JRAは二重免許を特例として認めざるを得ない状況になり、特例を適用しました。

その後、2003年6月16日に地方競馬全国協会は、安藤のNARにおける騎手免許を取り消したため、この特例は解消されました。

調騎分離

現在、中央競馬及び地方競馬では騎手免許と調教師免許を同時に持つことはできない。つまり、調教師が自分の管理する競走馬に乗ってレースに出走することは現行の規定では不可能である。

1930年代以前は「調教師兼騎手」は珍しい存在ではありませんでした。

一例を挙げると大久保房松などは、管理馬に騎乗して日本ダービー制覇を達成しています。

調教師と騎手の業務が分離されるようになったのは、1937年に日本競馬会競馬施行規定が規定されてからです。

ただしこの規定は、日本競馬会発足以前に免許を受けていた調教師(騎手)に対しては、1942年12月31日までは猶予期間とされたため、猶予期間中は引き続き調教師が騎手としても騎乗することができました。

なお、戦後の一時期も調教師が騎手を兼務することが可能であったが、1948年より調騎分離が厳格に適用されることになり、調教師と騎手の兼務が不可能となり、現在に至っています。

ばんえい競馬においては平地競馬よりもかなり遅く、1978年度より完全実施されています。

外国人と騎手免許

日本国籍を持たない騎手に対する免許制度としては、1994年より短期騎手免許制度が設けられているが、前述のとおり短期免許では騎乗期間が年間で最大3か月間に限られます。

これに対し、外国人騎手からは「年間を通じて騎乗できる免許を発行できるようにして欲しい」との要望が以前からあり、これを受けてJRAでは2014年度の騎手免許試験より外国人騎手に対する通年免許の発行を認めることになりました。

なお外国人騎手が中央競馬の通年免許の発行を受けた場合、当該騎手は「年間を通じて中央競馬で騎乗すること」が必須要件となります。

2013年10月に行われた1次試験ではミルコ・デムーロ(イタリア)が試験を受験、外国人騎手によるJRAの騎手試験受験第1号となったが、この年は不合格となりました。

2015年にミルコ・デムーロとクリストフ・ルメール(フランス)が騎手免許試験に合格外国人騎手として初めてJRAの通年免許を取得しました。

その後、ダリオ・バルジュー(イタリア)が2015年と2016年の2回、JRA騎手免許試験の1次試験を受験したが、2年連続で不合格となっています。

母国と日本の騎手免許併用の可否については、国により差異があり、併用ができないフランスの騎手免許を取得していたルメールはJRA通年免許の取得にあわせてフランスの騎手免許を返上しています。

地方競馬教養センター

地方競馬の騎手になるために通うのは、栃木県那須塩原町にある地方競馬教養センター

入試はJRA競馬学校の方が先に行われるため、JRAを不合格になってから地方競馬教養センターの入試を受け人も多くいます。

こちらはJRAの3年間に対して、2年間の課程。

卒業生は地方競馬の騎手免許試験を受験し、合格すれば各地の地方競馬で活躍できることになります。

また地方競馬で経験を積めば、中央競馬の騎手免許試験を受け、中央競馬に移ることも可能。

最近は地方競馬出身で賞金ランキング上位に入る騎手も増えています。

騎手に必要な資質

希望者が多く、試験で不適格とされることも多いジョッキー。

では騎手になる為に求められる資質とはどういったものなのでしょうか。

軽い体重

多くの人にとって最も大きな障害となるのが、体重規定

JRA競馬学校を受験する際も、年齢に応じて体重の上限が定められます。

令和5年度の入学生募集では誕生日に応じた体重制限は以下のようになっていました。

  • 平成17年3月31日以前・・・48.0kg以下
  • 平成17年4月1日〜平成18年3月31日・・・47.0 kg以下
  • 平成18年4月1日〜平成19年3月31日・・・46.0 kg以下
  • 平成19年4月1日以降・・・45.0 kg以下

このように厳しい体重制限はありますが、身長の制限はありません

とはいえ、身長が高いと体重管理に苦しむのは事実。

小柄で運動神経が良い人が最も向いていると言えます。

冷静な闘争心

ジョッキーに求められるのは、どのような状況からでも勝利を目指す闘争心。

しかしレースの中では冷静に周囲の状況を判断して馬を制御しなければなりません。

つまり冷静さと闘争心を兼ね備えていることが求められるのです。

フェアプレー精神

競馬は命がけの競技です。

多額の賞金がかかっている中でもルールを守り、正々堂々と戦わなければ、他の騎手を危険に巻き込むことにもなってしまいます。

そのためフェアプレー精神は必要不可欠とされます。

正義感

競馬は多額のお金が賭けられる公営ギャンブルです。

サラブレッドの育成にも膨大な費用がかかり、レースで動く金額は非常に高額になります。

その裏には不正への誘いもあるかもしれません。

しかし競馬は公正に運営されているという信頼がなければ崩壊してしまう世界。

絶対に不正には加担しないという正義感が騎手には求められるのです。

自己管理力

「競馬は騎手を買え」とも言われる通り、ファンは騎手を信頼してお金を賭けます。

その騎手がいい加減な自己管理で体調を崩していては信頼を裏切ってしまう事になります。

自身の体重を一定に保ち、最良の状態でレースに臨めるようストイックに自己管理をする能力や真面目さが必要です。

馬好き

JRAの競馬学校や地方競馬教養センターの募集要項に「乗馬体験がある」という項目はありません。

しかし馬好きであることは騎手にとって非常に大切な資質です。

騎手の仕事はレースに出場する事だけではなく、レース出場がきまった競走馬の調教も含まれます。

日頃から馬と信頼関係を構築し馬と心を通わせることが勝利に直結します。

騎手の収入は?

騎手の主な収入はレースから生まれます。

ただ、レースでの収入にもいくつかの種類があります。

以下ではその種類についていくつかご紹介していきます。

進上金

騎手にとって最も大きな収入になるのが進上金です。

騎乗馬が好走して賞金圏内に入ることができれば、騎手には賞金の一部が与えられます。

賞金のうち、平地競争と呼ばれる通常レースでは5%、障害競走では7%が騎手の取り分となっています。

例えば11月末に東京競馬場で行われるジャパンカップは、1着賞金が2億5,000万円であるため、1着馬に騎乗していた騎手は1,250万円の賞金を得られます。

G1以外でも、中央競馬なら1着賞金は400万円以上ですから、勝つことができればそれなりの収入を得られることが分かります。

ただし、地方自治体の主催する地方競馬になると、賞金規模は小さくなります。

1着賞金が20万円程度のレースもあり、同じ機種でも、中央競馬と地方競馬では大きな差があることが分かります。

騎乗手当

騎手はレースに参加した時点で乗馬手当てが与えられます。

中央競馬の場合は、平地競争なら2万円~6万円ほど、障害競走なら7万円~14万円程度です。

毎週土日の競馬で1日に7,8レース近く乗る騎手も多く、そんな騎手たちは騎乗手当だけでも1ヶ月で100万円以上の収入になります。

一方、地方競馬では数千円の場合も多く、こちらも大きな差があります。

騎乗契約料

騎乗契約料とは、騎手が所属している厩舎の馬でレースに出場した時に支払われる報酬です。

金額の設定は厩舎や騎手によって異なります。

厩舎に所属している騎手のみが得られる報酬なので、フリーの騎手には支払われることはありません。

調教料

調教料はフリーの騎手が調教をした場合に支払われる報酬を指します。

地方競馬にフリーの騎手はいないので、中央競馬で活躍する騎手に限られます。

騎乗による調教は1日5頭までと設定されていて、美浦のトレーニングセンターでは1回1,500円、栗東のトレーニングセンターでは1回1,000円です。

中央競馬騎手の平均給与は約83万円

騎手は競馬レースでの賞金獲得や騎乗手当を主な収入源としているため、一般的なサラリーマンのように、毎月決まった金額を収入として得ている訳ではありません。

また、実力のみが給料に反映してくるので、経験が長ければ長いほど給与が上がることもありません。

中央競馬の騎手の平均年収は約4,000万と言われており、単純に月換算すると平均給与は約333万円。

賞金金額が低い地方競馬の騎手の場合は、トップ騎手でも一般的なサラリーマンよりも多い程度と言われています。

過去の高収入騎手

これまでの歴代最多賞金は2005年に44億1,404万2,000円を記録した武豊さんです。

彼は歴代最多賞金の2位、3位の記録保持者でもあります。そんな武さんが2012年の4月にJRA生涯獲得賞金が700億円を突破し、大きな話題になりました。

こちらについても、騎手が実際にもらっているのは5%であり、武さんの場合は35億円が相当します。

このようなトップクラスのジョッキー以外でも、JRA騎手は高収入の職業と言えます。

しかし、騎手という仕事は極めて危険であり、レース中の落馬などで重傷を負ったり、落馬の結果、後遺症が残ったりする場合や、場合によっては命を落とすこともあり得ます。

そのような理由も高収入の一因と言えるでしょう。

ただし、前述のように地方競馬となると賞金は、中央競馬の1割以下になる場合もあり、このような騎手の賃金格差も問題になっています。

まとめ

今回の記事では、競馬の騎手についてご紹介していきました。

騎手の獲得賞金の取り分はJRAも地方競馬も変わらず5%、障害競走は7%であること、獲得賞金の他にも得られる収入は複数あることをお分かりいただけたと思います。

騎手の取り分が思いの外少ないことに驚いた方もいらっしゃったのではないでしょうか。

これから競馬を観戦する際は、騎手の獲得賞金の取り分を意識してみると、競馬の楽しみ方がほんの少し増えるかもしれません。

本間真一郎

1978年12月22日生。東京大学経済学部中退。 某大手商社で役職に就く典型的なエリートでかなりの知的派。その一方で趣味の競馬歴は既に20年を超えており、2021年のエリ女で3連単を的中させたことを未だに友人に自慢している。 好きな馬はもちろんアカイイト。 趣味は車とウイスキー。最近横浜にバーを開店させたオーナーとしての一面もある。 好きな言葉は「明日の百より今日の五十」。

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